INTO THE FABRIC主催にて、変わりゆく職場環境やキャリアの築き方にしなやかに対応し、必要とされる人材になるにはどうしたらいいか?をテーマに、人事戦略コンサルタントとして活躍する松本 利明(まつもと としあき) さんを講師に迎えたキャリア相談イベントを開催しました。大手IT企業で働く社会人4年目の営業女子、日水 真理(ひみず まり)さんをファシリテーターに、松本先生に色々なお話をお伺いしました。

オンライン(Zoom)で開催された今回のイベントには、社会人4-5年目の若手から20年近くのキャリアを持つベテランまで幅広く、20名を超える方々にご参加いただきました。前半は講師の松本さんからのお話を中心に、後半には参加者同士でディスカッションをしたりQ&Aセッションなど、インタラクティブに進行。もっと話したい!という方も大勢いらっしゃり、約120分間のイベントとなりました。

 1.オープニング

ファシリテーターと講師の自己紹介からイベントはスタート。社外にもコミュニティを持つことで生きやすくなる事を過去経験し、今はイベントのファシリテーターやラジオ配信など幅広い社外活動をしているという社会人4年目の日水さん。そして講師の松本先生は、PwC、マーサー、アクセンチュアといった大手戦略コンサルティング会社で組織戦略に最前線で携わり、その後独立し大企業から中小企業まで24年間で600社以上の人事改革を手掛けてきたプロ人事戦略家です。

日水:コロナの影響もあり、実績や自分ができる事を説明する機会が増えてきたように感じます。ただ会社に勤めているだけだと、通用しない日がくるのでは?「現代版戦国時代」とも言える世の中が本格化するのに備えて、参加者の皆さんのヒントとなるようなイベントにしたいと思います!

松本:本日はどうすれば自分らしく活躍できるか?を導きたいと思っています。これさえ知っておけば、選ばれる人材になることができるよ、というコツをお伝えできるようお話しますね。

本イベントの目的は、「JOB型」「リモートワーク」など働く環境が大きく変化する今、どんな思考でどんなアクションを取っていくべきなのか?という問いに対し、「自分は何者なのか?」「自分は何が出来るのか?」という事をしっかりと把握し、自分らしく強くしなやかに生きるための「自分軸」をつくるヒントを持って帰っていただく事です。

 2.ゲストトーク&トークセッション

キャリアの話になると大抵の人は「強み」を見つけないと、と思ってしまうのではないでしょうか。社会人4年目の日水さんも、例外なく同じように考えています。

日水:JOB型人材という言葉にちょっと当惑しているのですが、どのように強みを見つけていったら良いのでしょうか?

松本:まず、スキル上の強みを見つけるという考え方をやめましょう!その分野で自分よりもっと強いひとがでてきたら負けてしまうからです。そうするとその瞬間に強みだと思っていたものは、強みでなくなってしまいます。また、同じ職種では同じ仕事になるので、結果、スキルの強みが似通ってしまうため、差別化ができず、悩んでしまう人が多いのです。

冒頭より、常識を覆すような松本先生のアドバイスがあり、日水さん含め参加者たちは驚きを隠せない様子でした。松本先生曰く、スキルとしての強みだけを自分の”強み”として考えてしまうと、「勝てない」ことが多いとのこと。コミュニケーションが得意な営業、といってもそれは営業職の方全員が持ち合わせていないと困るスキルですよね、といった例え話もありました。また、スキルの掛け合わせもよく言われる事ですが、掛け合わせるとしても似通ったスキルを掛け合わせる事が多いので、「オリジナルな強み」になることは少ないそうです。

松本:じゃあどうしたらいいか?スキルに自分自身の「持ち味」を組み合わせればいいんですね。いわゆるその本人の「資質」です。資質は性格、価値観、根本的な動機です。所説ありますが20歳過ぎには固まってしまう特徴で、後天的に変わりにくいものです。持ち味(=資質)とスキルは違います。持ち味に沿ったこと(得意なこと)はラクに早く成長しやすいのです。20歳まで100mを走るのに30秒かかっていた人が21歳の誕生日を迎えた瞬間、100mを10秒で走れるようにならないのと一緒です。短距離が速い資質を持っていればマラソンランナーを目指すより、短距離走者を目指す方が有利なのはわかりますよね。

自分の持ち味がしょぼいと思っても心配いりません。人の持ち味は一つだけではありません。いくつかコンボして組み合わせていくと、オリジナルになりやすいんです。

参加者たちは大きくうなずいて興味津々な表情に。そこで日水さんが「持ち味はどうやって知ることができるでしょうか?」という質問を投げかけます。

松本:それは「ありがとう」の声をよく観察する事です。自分がどんなときに「ありがとう」と言われるか考えてみましょう。同じ事務の仕事をしていても「正確でありがとう」「速くてありがとう」「気を利かせてくれてありがとう」というように、人の数だけありがとうの声があるのです。あなたも仕事を頼む時は、その人の普段のパターンを想定してから人選しますよね。それと一緒です。人は自分をよく見せたい生き物なので自分で自分を客観しするのは難しいで、周りに聞いてしまうのが早道です。

人に聞く以外で、松本先生の考える自分の「持ち味」の見つけ方は、意外にも、コンプレックスや欠点に光をあててそれらを「魅力」に変換することだそうです。こうすれば持ち味のコマ数を簡単に増やせるそうです。

コンプレックスや欠点を魅力に変えるための松本先生の魔法のコトバも紹介されました。それは、「いい意味で」と置き換えてみること。

松本:ビジョンがもてない→「いい意味」に置き換える→断らずに素直に聞き、柔軟対応できる。みたいな言い換えです。この例はオリエンタルラジオの中田敦彦さんが相方藤森慎吾さんをご自身の著書「天才の証明」(日経BP)の中で解説しています。オファーを断らず、歌ったり、踊ったり、役者をやったり、MCやったり、持ち味に沿って素直に学ぶので活躍の巾が広がっています。コンプレックスと良い面は、表裏一体なんです。それらを良い面と組み合わせて行けばいいんです。そうすれば100人に1人の人材になれるのです。

松本さんから米ギャラップ社が展開する「ストレングスファインダー」についても紹介がありました。ストレングスファインダーで上位5項目は本人の「強い資質」になるので、それらをかけ合わせると「コンボ」ができるのだそうです。たくさんの「持ち味」をかけ合わせることによって、オリジナルの強い技になっていくのです。そして、どの資質をかけ合わせるべきか?については相手によって変えるというお話もありました。

松本:例えば、ある編集者の話。編集者は酒が強い(=飲みに行って仕事を取ってくる)というのが定説ですが、酒が強い編集者は星の数ほどいます。しかし、ある編集者は酒が飲めなかったのです。その代わりに、コミュニケーションを密にとり「気が利くこと」をたくさんしてみたそうです。そしてその方はこんなにサポートが上手な編集者は他にいない!という評判になり、今ではベストセラーを排出する名編集者となりました。この話は今では片付けコンサルタントとして有名になった、「コンマリ」さんの著書の編集者です。

自分のキャラクターや特性、資質はどんな風に活かせるか?を客観的に考えるのが重要なのですね。そして、自分の資質に合わない所へは行かないこと。自分の持ち味が喜んでもらえるところを探すという事も大きなポイントとなるのです。

持ち味の活かし方は、組み合わせ以外に、ライフサイクルの視点からの解説がありました。

松本:事業の導入、成長、再展開、どこに向いている?をよく知ることが大切です。大企業で役員をやっていた年長者がベンチャーの役員に就いたけれど、機能しないみたいな事はよくあります。彼らは安定期に強かったんです。仕組化して効率的に組織を動かす力はあったけど、生み出す力はなかった。こういった意味で、自分の持ち味(キャラ)がどのライフサイクルに合うのか?を見極めているべき場所を知ることが外さない条件です。

自分らしく勝つには、ライバルが多いところを狙わない。強味勝負の消耗戦になるからです。キーはライバルが多いところの、逆張りです。ライバルが少ない上、自分の持ち味をコンボすれば簡単に自分らしく活躍できるようになります。

普段、わたしたちがよく考えてしまいがちな方向ではなく、勝てるための具体的な視点を、次から次へと分かりやすい例を交えてお話される松本先生のポジティブな空気感に、ウェブ上なのに参加者たちのムードがとても高まっているのを感じました。

そして、参加者たちがいくつかのブレイクアウトルームに分かれて感じたこと、疑問に思ったことをディスカッションする時間が設けられました。筆者が見学させていただいたグループは、社会人5年目の航空会社グランドスタッフの男性、社会人17年目のエンジニアの男性、そして転職活動中の女性。それぞれ、松本先生のお話を聞いて「自分の資質が活かせる仕事を、先が見えない今どのように選んでいったら良いのだろう?」、また「自分のコンプレックスを持ち味に変えるというのが少しうまく発想できず、どのようにやるのかヒントがほしい」などの疑問や意見が出ました。それに対して、「こうなんじゃないか」という提案がグループ内でもインタラクティブに行われており、参加者の意識の高さも垣間見ることができました。

 3.Q&Aセッション

その後行われたQ&A セッションでは、各グループから出た疑問や質問に対して、松本先生がひとつひとつ丁寧に回答をされました。

理論は理解しても、どのように自分に落とし込んだら良いのか?どのような方法で実行すべきか?についてモヤモヤしている方が多かったのですが、具体例を出しながら松本先生がときには場を盛り上げるようなジョークを交えながらお話されていたのが印象的でした。

 4.エンディング

大いに盛り上がったQ&Aの後、本日のエンディングとなりました。

松本:古田新、渡辺なおみをめざそう。彼・彼女は、自分の「持ち味」をよく理解して、うまく居場所を見つけています。JOB型という言葉に踊らされず、自分の持ち味を出し切ることに注力しましょう。なぜ人が迷うかというと、今までとキャリアの築き方の構造が大きく変化している上に、副業、働生き方含め、選択肢が多くなってしまうため、選べなくなるのです。これからは、「自分らしく」。強烈な個性で自分らしい価値を出していくと、自分にあったオファーがたくさん来るようになりますよ。

INTO THE FABRICでは、人々や組織が楽しめる社会を実現するために様々なヒントとなるイベントを開催しています。企業でのセミナー&イベント、また事業設計段階から伴走するコンサルテーションなども行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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▽イベントタイトル

『「自分らしさ」を武器にするキャリア相談 #1』

▽イベント概要

日時  :2020年9月3日(水)20:00~21:30
会場  :オンライン開催
人数  :約20名

▽ゲスト

松本 利明 さん

人事戦略コンサルタント。PwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長クラス)を経て現職。24年間で世界や日本を代表する大企業からベンチャーまで600社以上の人事改革に従事。5万人以上のリストラと6500名以上のリーダー選抜を行った中で見えた仕事術やキャリアの作り方についてまとめた『「ラクして速い」が一番スゴイ』(ダイヤモンド社)、『稼げる人稼げない人の習慣』(日経ビジネス人文庫)、『「いつでも転職できる」は武器になる』などベストセラー多数。
現在は、企業向けのコンサルティングに加え、「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」にするため、「持ち味の見つけ方・活かし方」を、ビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。
HR総研 客員研究員。
新R25、日本経済新聞、AERA、マイナビニュースから英国BBC放送など、メディア実績多数、講演、寄稿多数。

日水 真理さん

IT企業に勤める社会人4年目OL。優柔不断が高じて、日々人生迷える仔羊。
会社員の傍ら、誰しもが受容され人との繋がりを感じられる「安全地帯」のようなコミュニティづくりを模索中。現在は様々なコミュニティスペースで人と人との交流を促すイベントファシリテーターなどを務める。また、ソーシャルバーPORTOの日替わり店長の一人。
日頃から自分の好きなことに対して貪欲、「やりたいと思ったら即行動」を心がける。最近ではラジオ配信にも挑戦。

(Writer: 星マリ)