INTO THE FABRICでは、「場づくり」や「働き方」をテーマに、多彩なゲストを招いたトークイベントを不定期で開催しています。
 今回は「1つの会社だけで本当に良いの? ~複数のコミュニティに所属することが人生を豊かにする~」と題して、1つの会社だけでなくいくつかのコミュニティに参加して人生を豊かにしていきたい人にヒントを得てもらおうと、人事戦略コンサルタントの松本利明さんとINTO THE FABRIC高嶋との対談イベントを開催しました。
暑い夏の土曜の朝にもかかわらず、渋谷のBOOK LAB TOKYOにはたくさんの参加者が集まりました。このレポートでは、以下の流れでイベントの内容をお伝えします。

目次

  • 1つのコミュニティだけでは、跳べることに気づかない
  • 複数のコミュニティを経験すると、自分なりの物差しができる
  • 肩書きにとらわれず、「自分は何ができるのか」を伝える
  • 複数コミュニティに属すると人生は豊かになるのか?
  • 参加者の感想とQ&A
   まとめの一言

 松本利明さんは、人事戦略コンサルタントとしてPwCやマーサーアクセンチュアなどで外資系・日系の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事改革を行ってきました。5万人以上のリストラと6000名以上のリーダー選抜を行ってきた人の目利きです。『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)など、ベストセラーの著作も多く、英国BBC、TBS、日経、AERA、週刊SPA!などのメディア実績、講演多数など、多方面で活躍されています。

 高嶋大介は、本業に軸を置きながら一般社団法人INTO THE FABRICを立ち上げ、「場づくりで人を変える」をテーマに、ワークショップや企業向け研修、“ゆるいつながり”をつくるコミュニティ「100人カイギ」などを企画・運営しています。これまでさまざまなコミュニティに関わってきた経験から、複数のコミュニティに所属することで得られる価値を語ります。

1つのコミュニティだけでは、跳べることに気づかない

 「この中で、1つの会社にずっと勤めているという方、います?」

 松本さんが会場へ質問を投げかけると、ちらほらと手が挙がりました。続いて、前方スクリーンにガラス瓶に入れられたノミの動画が映し出されます。ノミは、ガラス瓶の口を越えて跳ね上がっています。ところが、「瓶にふたをして2日ほど置くと、ふたを開けても瓶を外しても、ノミは瓶に閉じ込めらたときの範囲内でしか跳ねなくなるんですよ」と松本さん。何もない机の上で瓶の形そのままに跳ねるノミたちは、とても不思議な光景です。会場からは「おおー」「えー」という声が漏れます。

 「人にも同じことが起きる」と松本さんは言います。「同じ環境、1つのコミュニティだけにずっと属していると、“高く跳ねる”ことができなくなります。自分の能力を制限してしまい、さらに制限していることにも気づけない、ということが起こるんです」

複数のコミュニティを経験すると、自分なりの物差しができる

 松本さんと高嶋は、日本人は「自分がいつも当たり前にできていること」に対して自信を持ちにくいと言います。謙遜はよいことだけれど、一歩を踏み出すためには勇気に繋がる自信が必要。その自信をどうやって持てばよいのか、語り合いました。

 松本さん曰く、人は絶対値ではなく比較先がないと客観視しにくい。複数のコミュニティに所属して、異業種やいつもと違う人と接することで、普段無意識のうちにできていること、逆に出来ていないこと、世間と比較して自分はどの程度実力があるかについて気づけると言います。

 高嶋は、NPOや地域団体、プロボノなどのコミュニティに属すると、さまざまな人に出会い異質な見方に触れることができるので、思考の硬直化を防げると言います。同質化を避けて多様性の中に自分を置くことが、自分の強みの発見につながるのですね。


肩書きにとらわれず、「自分は何ができるのか」を伝える

 新しいコミュニティに一歩を踏み出し進んでいくには、そのコミュニティの中で自分はどんな貢献ができるのかを考え、さらにそれを知ってもらうための「自己紹介力」が重要だと、松本さんは語ります。自己紹介力を高めるには、過去、現在、未来の各視点から自分を語ることがポイント。その際、「たくさんの人材育成に関わる」と形容詞で表現するのではなく「6000人以上の人材育成に関わった」など、具体的な数字や名詞で示すことが正しく伝えるコツと教えてくれました。さらに未来を語る時、目の前の人が興味関心を持ちそうなことに、自分がどう貢献できるかを1行で伝えることで、相手の琴線に触れ、確実にいい印象で覚えていただくことができると秘訣を教えてくれました。

 松本さんはさらに、「欠点には魅力が隠れている」と話します。「太ってる」でも「愛嬌がある」「癒し系」「相談したら受け止めてくれそう」など、欠点は「いい意味」で見方を変えるとその人の魅力に変わるということ。実は優秀で活躍されているリーダーは結果を出すだけでなく、欠点やコンプレックスを魅力に変えて人気を集めているそうです。
強みや持ち味だけでなく、欠点を変換した魅力を加えるという話は、目から鱗でした。

複数コミュニティに属すると人生は豊かになるのか?

 複数のコミュニティに属することで、人生は豊かになるのでしょうか?「一つの正解はないけれど」と前置きしながら、松本さんは「多くの人と出会えう中で、よい距離感を保てる人と出会える確率が上がる、というメリットがあります」と話します。

 また、高嶋は「ワークライフバランス的にはどうかなと思う点もありますが、会社ではできないことを諦めずにすむようになり、人生が格段に楽しくなったのは間違いないです」とのこと。「会社外でのコミュニティは、いろいろなチャレンジができる場。チャレンジという行動そのものに価値があると思います。複数コミュニティに属することで、経験が豊かになるのは確かです」(高嶋)

参加者の感想とQ&A

 ここで、会場の参加者に感想を聞いてみました。

「新しい一歩の踏み出し方や、その際の自己紹介の大切さやコツがわかった」「新鮮でためになった」という感想が多かった一方で、参加するコミュニティの探し方や選ぶ基準に迷っている方も。

 そんな人に対して、高嶋は「自分の興味のあるコミュニティへ参加するのが一番。自分でコミュニティを作ってしまうのもアリです」とアドバイス。知り合いがいないところに行ってみるのも収穫があるとのこと。松本さんも「興味が持てるところが良い」と頷いていました。

 新しい一歩を踏み出すには、「自分が楽しいと感じること」をやるのが大事、と高嶋は繰り返します。会社の中ではできないことをやる、面白そうだからやってみる、で良い。さらに松本さんは、参加してみて「良い違和感」を感じるコミュニティは良い刺激につながるのでおすすめ、と話されていました。

まとめの一言

 「1つの会社というコミュニティだけで生きていると、自分の良さに気づけないことが多い、いろんな場に出ていくことでそれを知ることができる」と松本さん。

 Text by Kayoko Fumoto .
Edited by Ayumi Miyakawa.

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 ライティング 宮川 歩